TOP 4つの主要業務と役割の広がり

世界で活躍できる実践力を持った学生を育成し、優秀な人材を社会に多く輩出することをめざして取り組む技術職員の主要業務は【実験教育】【研究力強化】【安全教育】【社会連携】の4つ。さらに、これらのフィールドで培った経験や専門知識、技術力を活かして、大学運営の根幹に関わるなど、活躍の場が広がっています。

主要業務1: 実験教育

教職協働による実験実習科目の効果的な運用

教員と協働しながら実験教育プログラム全体をマネジメントし、実験教育の現場に立って、日々直接、学生に実験指導したり、実験コンテンツを開発・改良することが中心の業務で、世界の発展に貢献できる人材を育成しています。

実験指導

専門技術を有する技術職員は実験実習科目において科目担当教員とともに直接、技術指導を行うほか、データ解析や要因分析を学生がグループワークで主体的に取り組むようファシリテーターとしての役割も担い、教育効果を上げています。

また、科目担当教員を中心に、助教・助手、ティーチング・アシスタント(主に大学院生)と連携した指導体制とすること、学部・学科に関わらず共通利用ができる機器装置を効果的に活用することで、多人数が受講する科目であっても、一人一人が見て触れて考えることのできる充実した実験教育環境を提供しています。

ティーチング・アシスタントは、学部生への実験指導やディスカッションの支援、学生からの質問に対する助言を行うことが主な役割ですが、適切にかつ教育効果を高めるためには事前教育が重要です。その役割も技術職員が担っています。実験指導に必要な技術だけでなく、学生対応をする際の基本姿勢(望まれる行動や態度、気をつけるべきこと)を徹底し、大学院生自身の成長にもつなげています。

実験コンテンツ開発・改良

試行錯誤を繰り返して解決策を見出すプロセスの修得は、専門知識の習得と並んで重要な学びです。試行錯誤のプロセスを経験するには、学生自身が主体的に考え、行動することが必要です。技術職員は日常的に学生と関わっているため、学生の理解度や興味・関心を感じる機会が多く、それを活かしながら、学生のさらなる学びの効果向上を狙い、毎年、実験コンテンツの改善・改良を積み重ねています。

また、科学技術分野の社会状況や業界動向、技術の進歩を踏まえながら、教員と協働し、主導的に新規の実験コンテンツの開発も行っています。最近では、映像教材による事前学習(反転教育)を導入し、実験教育の現場では、ひとつでも多くの体験とディスカッションの時間を確保するケースも増えています。

重要視しているのは、「知っている」と「できる」の違いを学生自身が感じられること。知識から知恵を生み出すホンモノの経験を積む環境整備と、それを実現する教育プログラムの質の向上こそが今後の大学の行方を握る鍵と考えています。

実験実習科目関連業務

このほかにも、実験教育に関する教職協働の会議体運営から、教務事務、予算管理、機器管理、物品管理などに至るまで実験実習科目関連業務は多岐にわたります。これらの適正な執行もついても、技術職員が中心となって取り組んでいます。

会議体運営機器装置の導入に関する中長期計画の策定や予算執行計画、その他、実験室運営に関することについて協議しています。
教務事務レポート管理業務をはじめ、各学生の出欠状況や成績評価に関する各種データを取扱う事務業務を行っています。
予算管理試薬や備品などの消耗品の購入計画、機器装置の修理・更新など、実験実習科目運営に必要な予算の執行・管理しています。
機器管理機器装置の定期メンテナンス、修理対応などを行っています。
物品管理試験片材料、試薬、備品等の消耗品の在庫管理・調達を行っています。

学部学科横断型分野別実験室で展開している実験科目

WASEDA理工の実践教育の根幹を支える各実験室で実施している実験科目などをまとめたウェブサイト『早稲田理工、実践教育の礎(いしずえ)』を紹介します。

主要業務2: 研究力強化

スケールメリットを活かした組織的な研究力強化体制

技術職員ひとりひとりの高い専門性を活かした技術コンサルティング・技術支援により、知識と技術を身につけた実践力のある学生の育成に貢献しています。このように学生の実践力を上げることは、学生自身の成長につながることはもちろん、大学全体としての研究力の強化にもつながります。

また、技術職員は定期的なジョブローテーションを経ながら、主たる専門技術を深めながらも、関連する周辺技術分野の業務にも携わり、総合的な知識・技術を習得していきます。大学での研究活動は学際化や産学官連携が進むなど、多岐にわたる分野が関連する研究活動が増えています。このような状況の中、深い専門性と広い視野を活かした技術コンサルティングを行う技術職員体制は研究力強化の一翼を担っています。

技術コンサルティング

適切な計測手法の選定や正しい実験結果の分析は、効率的・効果的な研究活動の促進につながります。技術職員は「物理」「化学」「生命科学」「電気・電子」「情報」「機械」「材料」等の個々の専門性を活かし、学生の研究活動に対して技術コンサルティングを行っています。

また、研究活動の促進に留まらず、学生がより優れた研究成果を出すための取り組み方についてもアドバイスするなど、人材育成としての側面も担っています。時には学生と共に試行錯誤しながら分析・解析を行って研究成果を得たりすることもあります。ともに活動することで、学生は実践的な研究の進め方を体得する貴重な機会にもなっています。

技術コンサルティングを積み重ねる中で、新たな知見を見出したり、技術を開発することも重要な役割です。内容によっては論文による公開や特許の申請につなげることもあります。このように、新たに得られた知見・技術を学内外へ発信するなど、研究活動への関わりは深く、大学全体の研究推進に寄与している部分でもあります。

共通機器装置整備

学部や学科の枠を超えて共通的に利用できる数多くの機器装置を技術職員が組織的に管理・運営しています。これにより、限られたリソース(資金的、人的、スペース的)を有効に活用することができ、より高度な装置をより多く利用できる実験研究環境の整備につなげています。

技術職員が組織的に関わることで、実験教育と研究強化の両立を実現しています。高度な研究に使用する機器装置を活用した実験教育プログラムを展開することが容易となり、学びの質が向上するほか、スケールメリットを活かしたリソースの活用により、研究に専念できる環境を生み出す源泉にもなっています。

このような共通機器装置の運用にあたり技術職員は、ニーズの把握、機器選定、導入計画、運用ルールの策定、学生指導・技術コンサル、設備保守、更新計画など、一連の流れに関わっています。

体系的な技術講習プログラム開発

共通機器装置の適切な利用方法やアドバイスは個別の対応も行っていますが、より多くの利用者が体系的に知識や経験を向上できるように、技術講習プログラムを開発し、広く展開しています。実習を交えた実践的な技術講習プログラムは、学生のみならず、研究者や技術職員の知識や技術の向上にもつながっています。

主要業務3: 安全教育

学生の安全意識を高めるとともに、安全な環境をつくる

実験実習・研究活動の現場では各種法令等を遵守し、安全な環境が整備され、適切な方法で実験・研究が行われている必要があります。技術職員はそれぞれの専門性を活かし、キャンパス全体の安全管理、安全環境整備に取り組んでいます。

そして、その根本は安全教育にあります。学生は安全な環境を享受するだけでなく、将来は安全な環境を提供する立場になります。自ら安全のことを考え行動する習慣づけは、できるだけ早く、大学生時代に身に付けておいた方がよいのは言うまでもありません。

そのため、技術職員は安全管理・安全環境整備はもちろんのこと、学生自らが主体的に安全について考え、安全を確保するために必要な行動を自然に取れるよう、特に安全教育について重点的に取り組んでいます。

安全教育

学部1~3年生に対しては日々の実験実習科目の中で機器装置や化学薬品等の取扱い説明を通して安全教育を徹底しています。また、学部4年生以上の研究活動が主の学生には、定期的な講習会を実施し、「化学薬品」「高圧ガス」「電気」「放射性物質」「動物・遺伝子組み換え実験」「工作機械」などの各分野に対する安全教育のほか、「事故・火災・大地震対応」「防災・避難設備」「実験を行う際の基本姿勢」など安全全般にわたって学ぶ機会を提供しています。

安全管理

安全な教育研究環境の確保を目的として、キャンパス全体の研究実験を行っている現場の安全点検、および学生、教員への改善指導を定期的に実施しています。また、化学薬品や高圧ガスなどの化学物質については納品から廃棄までを化学物質管理システムにて一元管理しており、それらのシステム構築や運用管理なども行っています。

主要業務4: 社会連携

社会との関わりの中で、より実践的な学びの機会を提供

企業や団体と連携し、学生に対して貴重な学びの機会を提供する

社会人に求められている基礎力として挙げられる「課題発見力」「創造力」「実行力」を身につけるには、自ら考え、試行錯誤を繰り返すプロセスが有効であり、正規カリキュラムにおいても、専門分野に応じた実験実習科目をはじめ、多くの機会を設けていますが、企業や団体との協力関係のもと連携することで、より広範囲にわたる学びの機会を提供しています。

WASEDAものづくり工房

http://www.koubou.sci.waseda.ac.jp

より高い「発想力」「実行力」を身につけた高い志をもつ早大生の育成を目的とした文理融合型の実践的な学びの場です。充実した機器装置と作業スペースを備え、気軽に相談できる技術スタッフが常駐する「WASEDAものづくり工房」は、『小さなやってみたい』から『本格的なものづくり』まで、自分の手でものづくりに挑戦できる環境です。文系・理系に関わらず学部の垣根を越えて早大生が集い、多様な視点に触れられるのも魅力のひとつです。

新しい発想やアイデアをカタチにし、試行錯誤を繰り返すことで、より深く豊かな発想や独創性を生み出すWASEDAものづくり工房はカリキュラムとは別の課外活動における学びの場であり、企業・団体・個人等のみなさま方からのご寄付を主たる資金として運営しています。

ものづくり工房の設立(2010年)に先立ち、ニーズ分析、機器装置の選定、レイアウト・空間デザイン、運営方法などについて考える学生参加型プロジェクトを技術職員がファシリテートしながら実施しました。しくみ作りも、ものづくりと考え、試行錯誤の繰り返しの中から、学生の成長の機会を提供した第一弾のものづくり工房プロジェクトです。このように、機会があるごとに学生の育成を考え、企画・実行することは技術職員の強みのひとつです。

企業との連携教育プログラム

http://www.koubou.sci.waseda.ac.jp/event/project.html

WASEDAものづくり工房では企業・団体から金銭的なご支援だけでなく、連携教育プログラムとしてご協力いただき、取り組んでいる活動もあります。

ローム株式会社との連携教育プログラム「WASEDAものづくりプログラム」は、アイデアをカタチにするための独創的な「ものづくり」企画を募集し、材料費補助や技術指導など、アイデアの具現化をサポートし、その成果を提案します。

株式会社カインズとの連携教育プログラム「新商品デザインプロジェクト」は、新しい生活スタイルを提案するコンセプト・デザイン(商品企画)、まだ見ぬ新しい商品を生み出すプロダクト・デザインなどの視点で、アイデアの創出だけではなく、試作品(プロトタイピング)による実現性の検討など、本格的に商品コンセプトをデザインし、提案するもので、新商品の発売につながったものもあります。

これらプログラムには技術職員が企画運営から企業との調整、事務局運営をするほか、学生へのファシリテーションにより、学生の課題抽出・分析・フィールドワーク・グループワークを効果的に進め、課題解決の具体的提案まで導き出します。

科学技術に対する興味・関心を社会に広める(社会貢献)

小中学生のための科学実験教室

https://www.waseda.jp/unilab/

早稲田理工では1988年から毎年、「ユニラブ(University Laboratoryの造語)」という小中学生向け科学実験教室を実施しています。大学の施設や実験装置を活用した実験や工作を通じて小中学生が科学・技術に対する興味や関心を高める機会を提供すること、そして、広く大学を社会に公開することが目的。また、セミナーハウスや系属校のある地域と連携しながら、現地での科学実験教室も定期的に開催しています。

これらの科学実験教室は、技術職員が主体的に関わり、教員・学生・事務職員と協働しています。この取り組みは技術職員にとっては組織力・技術力を活かして社会貢献ができるよい機会であるとともに、教育効果の高い指導方法・プログラムを考える上での視点は大学の実験教育プログラム開発とも共通点が多く、相乗効果を生んでいます。

また、在学生の関わりを増やすことにより、大学の社会貢献という側面に加え、学生の積極性や実践力を向上させるひとつの機会としても位置付けています。

また、ここ数年は、国際部とも連携し、現地企業や校友、留学生の協力も得ながら、台湾をはじめとするアジア系の国や地域でも、科学実験教室を展開しています。これは、社会貢献に加えて、将来の留学生リクルートにつながる業務のひとつとして位置づけています。

高大連携事業

早稲田大学の附属校・系属校やSSH対象校などと連携し、大学の実験環境を活用した高校生対象の実験実習を実施しています。大学での学びを体験し、高校までの知識の関連付けることで、学ぶことに対する動機づけを目的としています。

役割の広がり:
高い専門知識と技術力を活かした大学運営

本学では、創立150周年(2032年)のあるべき姿をWASEDA Vision 150 にまとめ、「人間力・洞察力を備えたグローバルリーダーの育成」や「未来をイノベートする独創的研究の推進」等を基軸に活動をしています。技術職員の業務は教育研究現場における学生の育成に留まらず、専門知識と広い視野を活かし、研究推進や国際展開、環境保全や安全衛生管理、教育プログラム開発等の大学運営業務にも及んでいます。

また、研究推進や国際、教務、社会連携といった大学本部機構でも、科学技術に対する知見を活かし、大学全体の価値の創造を担うなど、技術職員に求められる役割が広がっています。